メグミは、夜遅くに、路地裏の人けの無い所で、みさとりんに変身した。
その直後、

君!
警察官が、みさとりんの肩を叩く。

きゃっ!
変身するところを見られたのではないかと驚く「みさとりん」。

こんな所で何をしているんだね?

え、いや、あの、その・・・。

それにしても、すごい恰好だな。
何かのキャラクターのコスプレか?

は、はいっ。
ついさっきまでコスプレのイベントに参加していたんです。
その帰りです。

名前は?

え、えっと・・・、か、怪盗マスク・レディーです。

誰が、キャラの名前を答えろって言った。
まあいい、そんな事よりマスクを取って顔を見せなさい。

ダメです!
怪盗マスク・レディーは、他人に素顔を見られると、
怪盗をクビになってしまうんです。

何を漫画のような事を言っておる。
抵抗すると、公務執行妨害で逮捕するぞ。
警察官は「みさとりん」の仮面に手をかけた。

キャーッ、止めて下さいっ!
仮面の粘着力は、まだ回復しておらず、いとも簡単に仮面を剥ぎ取られてしまう。
思わず、素顔を手袋をした両手で覆う「みさとりん」。

コラ、ちゃんと顔を見せないか!
警察官は、強引に顔をこちらに向けさせ、みさとりんの素顔を見る。

なんだ、まだ小学生ではないか!

キャッ!
みさとりんは、手袋をした右手の人差し指を警察官の額に当てた。

ん?
俺は、何をしていたんだ?
おお、そうだった!
子供が、こんな所を独り歩きしてはならん。
そんな怪しい恰好では、痴漢に襲われてしまうぞ。
この辺は変質者が多い。
ちゃんと着替えてから帰るように。

は、はい、分かりました。
では、仮面を返して下さい。

仮面?
これは、俺が、娘の誕生日プレゼントにと、
そこにある玩具屋で買った物だぞ。
それを返せとは、どういう事だ?

(さっきのメモリー・イレイサーの影響で、
頭が、おかしくなったようだわ)

さっさと帰らんのなら、今すぐお前を
深夜徘徊の罪で逮捕してもいいんだぞ。

わ、分かりました・・・。

素直でよろしい。
みさとりんは、警察官から離れると、すぐにスター・シップに戻り、変身を解いた。

仮面を取られちゃったの・・・。

正体は、メモリー・イレイサーによって、バレていないと思うよ。

それに、凄くお酒臭かったから
警察官の記憶力も当てにならないと思う・・・。

それはそうと、仮面を取り戻さないと。
変身したとしても、仮面だけは無い状態になってしまうからね。

そうなの?

変身してみれば分かるわ。

メグミは、みさとりんに変身したが、やはり仮面だけは付いていなかった。

これだと、魔星と戦う事が出来ないよ。

仮面を取り返すまで、とりあえず、この仮面を付けていて。

何、この仮面?
本物に比べて、かなり小さいわね。
それに、ちゃっちい・・・。

お父さん、みさとりんにマスクを貰ったのね。

そうだ!
さっきの少女、みさとりんだったな!

お父さん、また、お酒を飲んでいたのね。

すまんすまん。
ストレスが溜まってばかりでな。

それにしても、みさとりんが、
私にマスクをプレゼントしてくれるなんて幸せ。
でも、私には大き過ぎて、残念・・・。
目の穴の間隔が違うから前が見えない・・・。

みさとりんには、10億円の懸賞金が掛かっているんだったな。

じゅうおくえんって、すごいの?

当たり前じゃないか。
一生遊んで暮らせるぞ。

お父さん、宝くじを当てるより、
みさとりんの正体を暴いた方が早いよ。
警察官は、みさとりんが、再び現れるのを待った。

このマスクを持っている限り、みさとりんは、必ず俺の前に現れる。
そして、小さな仮面を着けた「みさとりん」が、警察官の前に現れた。

おお、みさとりん、待っていたぞ。
なんだ、そのマスクは?
この本物のマスクは、うちの娘には大き過ぎたようだから、
大人しく素顔を見せれば、このマスクは返してやってもいいぞ。

そんな事、出来る訳ないでしょ。
おまわりさんが、そんな取引をしてもいいの?

何っ!
言わせておけば・・・。
子供だからって、俺は手加減なんてしねぇぞ。
痛めつけてやるっ。

みさとりんは、宙を舞って、警察官のパンチをかわす。

空を飛んで逃げるとは卑怯な。
降りて来い。

少女に暴力を振るうなんて。
それでも、おまわりさんなの?

言ったな!
降りて来ぬならスカートの中を見てやる。

いやらしいわね。
わいせつな行為はダメよ。

子供ごときが偉そうな事をぬかしやがって。
もう頭に来た。
俺の切り札を見せてやる。
警察官は、ピストルを抜いた。

降りて来ぬなら撃つぞ。

そんな・・・。
「バキューン!」
警察官は、弾を発射する。

本当に発砲するなんて・・・。
ピストルの弾は、みさとりんの横で止まっていた。

もうっ、信じられない・・・。
みさとりんは、時が止まっている間に警察官から仮面を取り返し、仮面を着け替えた。

ああ、やっぱり本物の仮面が一番いいわね。
しかし・・・。

くさ~い!
タバコくさ~い。
それにオヤジ臭までするわ。
もう、最低っ!
そして、ピストルの弾を反転してタイム・スタート。
すると、弾は、ピストルの銃口に入り、暴発した。

おわーっ!

仮面は、この通り、返してもらったわ。

い、いつの間に?

その代わり、この仮面をあげるわ。
娘さんには丁度いいかもね。
みさとりんは、小さい方の仮面を投下する。

私からのプレゼントよ。
みさとりんは、得意気に手袋をした右手の人差し指で鼻の下をこすると、
マントを翻し、消え去るのだった。